クレプトマニアについて調べてみました。
平成28年版の『犯罪白書』によると、「窃盗事件」は捕捉件数において刑事犯罪の7割を超えており、その中で最も多い犯罪になっていて、その件数は年に80万件を超えています。
この窃盗事件の内「万引き」が占める割合は14.5%にも登るそうです。
万引きは近年減少傾向にありますが、それでもまだまだ高い割合であると言えるでしょう。
万引きを繰り返し、刑務所に入り刑期を終えて出所してもまた万引きをしてしまう再犯者が後を絶たない状態が続いています。
これを「常習累犯窃盗」と呼び、社会問題にもなっています。
クレプトマニアとは?
「常習累犯窃盗」を犯す人の中には、「窃盗性」(クレプトマニア)といいます。
クレプトマニアに対応できる病院は非常に少なく、東京では「大森榎本クリニック」が唯一専門外来がある病院です。
「大森榎本クリニック」の精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんは、クレプトマニアに付いて次のように語っています。
クレプトマニアは、国際的な診断基準である「DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)」や「ICD-10(国際疾病分類第10版)」にも記載されている世界共通の疾患。
この患者の数はどのくらいなのかについての、しっかりしたデータは今のところありません。
日本の窃盗犯罪のうち、クレプトマニアに該当する数の推計もなかなか難しいのが現状である。
平成27年の犯罪白書では、万引きで検挙された者のうち窃盗の前科をもつ者は20%を超えています。
但し、それがクレプトマニアかどうかの判断は難しいのが現状です。
クレプトマニアであるかどうかの診断基準は次になる。
(1)個人的に用いるためでもなく、またその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される
(2)窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり
(3)窃盗に及ぶときの快感、満足、または解放感
などを挙げています。
ただし、現実には盗んだ品物をまったく自分で使わないということはなく、この「個人的に用いるためでもなく」という箇所はやや厳密にすぎるきらいがあり、実際の臨床場面での診断はもう少し柔軟に行なうべき。
クレプトマニアになる人の傾向は?
万引きをして、それを転売したり、自分で使っているケースはクレプトマニアではなく、金銭的な目的で行われる窃盗は該当しない。
金銭的な価値のためでなく、衝動的にスーパーやコンビニで商品を盗むことを繰り返す人が、クレプトマニアに該当する人の特徴である。
万引きをした瞬間は快感やスリルや達成感を感じるのですが、その快感には持続力がなく、家に帰って商品を見たら、なんでこんなものを取っちゃったんだろう、と感じるのが特徴です。
そして、この場合は逮捕されるまで続けてしまう。
年齢・性別の傾向としては、受診者のデータを見ると、50代以上が半数で、女性が半数以上の53%を占めている。
全体的には65歳以上の女性の割合が多くなっているのが特徴だという。
女性の高齢の方が次々と専門医と来るという実態がある。
見た目や服装、話し方も上品で、「なんでこの人が万引きを?」と不思議に思うような人たちが多い傾向がある。
共通する傾向としては、ご主人を亡くされるなどの喪失体験を経験した後に万引きが始まっているケースが少なくない、ということ。
75歳くらいでご主人に先立たれたものの、遺族年金で生活にゆとりはあり、お子さんもお孫さんもいるような人が万引きで捕まり、家族がビックリするケースもある。
クレプトマニアの原因は?
クレプトマニアの原因にはストレスも関係しているようです。
高齢者の方が多いというのは「孤独」が原因になっているという。
過去には全く万引きなどしたことがない人が、50代を過ぎて突然始めるというケースが多いのは、そのきっかけとして一番多いのが、パートナーとの死別や離婚してから始まっているケースが多い。
「孤独」が万引きを誘引するというのメカニズムを分析するのは、なかなか難しいことです。
そこにあるのは「失ったものを取り返す」という心理が働き、それが万引きという行為によって満たされるという意味合いがあるのではないかと専門家は分析する。
さらには、万引きで捕まることで、連絡が途絶えていた親族と触れ合う機会が生まれることで、孤独感が一時的にでも癒される結果になる。
このことは、本人は全く自覚がない。
万引きで捕まるということによって、刑事手続きを進む中で、初めて医療や福祉サービスにつながる人も少なくない。
つまり、親族とのコミュニケーションが途絶えていて、言葉では伝えられないことを、万引きという行為によって結果的にその意図が周りに伝わるという手段になっている可能性がある。
もちろん無自覚です。
もし、孤独な状態がこのクレプトマニアを生み出しているとすると、とても悲しと思いました。
治療方法
クレプトマニアの人は一度万引きを経験してしまうと、その時に生まれた衝動と快感を脳が忘れることはなく、万引きしたくなる衝動を消し去ることは難しいと言われています。
万引きの衝動が出ないように、生活術を学ぶことで社会復帰が出来るケースもありますが、治療できる専門病院もまだ少ないようです。
クレプトマニアは、病気なのでもしその可能性があると思ったら、専門医に見てもらいましょう。
普通の診療内科にいくと、ノウハウがないためまともな診断を受けることが出来ません。
医者側の問題で「病気」と診断されないと、本人の罪悪感がさらに深まる結果になり、症状が悪化する可能性があります。
専門の医療機関では、体系的ば改善プログラムを実施しているところがあります。
ミーティングや認知行動療法に参加しながら、「盗む必要がない生き方」を学んでいくようなプログラムです。
安易に近場の心療内科に行くのではなく、クレプトマニアの専門医を訪ねましょう。
クレプトマニアで捕まったときの対処方法
クレプトマニアは病気ですが、物を盗む行為は犯罪でになります。
万引きをしたことによって逮捕されてしまう可能性は十分にあります。
警察では、クレプトマニアに関する認知は殆どないのが実態ですので、何度も万引きしてしまうという結果だけで判断されるという実態を考えると、回を重ねれば重ねるとほど重い罪に問われます。
ですが、刑事罰ではクレプトマニアは治りません。
こちらでは、クレプトマニアの万引きで逮捕されてしまった後の弁護方法を解説します。
刑事罰には、犯罪の抑制や加害者の反省・再犯防止を目的とされたものですが、刑事罰を受けたところでそもそものクレプトマニアを治すことはできないので、出来るだけ早く刑事手続を終わらせて、早急に治療に専念することが重要です。
理想的な流れとしては「万引きで捕まる⇒早急に病気の治療をするという弁護⇒釈放される⇒専門家に診てもらう⇒完治」になります。
それには、クレプトマニアに理解のある弁護士に依頼をする必要があります。
クレプトマニアに理解のある弁護士に依頼をして、早期釈放での治療を必要とすることを弁護してもらうことが理想的です。
窃盗罪を得意とする弁護士に無料で相談をしてみて、クレプトマニアに理解を示してくれそうな人を選びましょう。
相談時には必ず「クレプトマニア」という単語をはっきりと言いましょう。
その時の弁護士の反応によって、クレプトマニアに対して認識があるかないかが判断出来ます。
まとめ
クレプトマニアは、医療で治すこともテーマであり、それに対応できる医療機関、医者が圧倒的に少ない実態があります。
それと、世の中の認知度も低く、病気と認知されず単なる窃盗犯として裁かれるというやるせない側面があります。
更には、高齢者をサポートする社会関係資本が枯渇している今の社会を浮き彫りにしている病気であるとも言えるでしょう。