ボジョレーヌーボーの季節がやって来ましたね。
毎年この時を心待ちにしている方もいるでしょう。
そして、この「ボジョレーヌーボー」とは何なのか?を知らない方が以外と多いのも事実です。
このコラムでは「ボジョレーヌーボー」とはなにか? 解禁とはなにを解禁するの?というとてもシンプルな疑問にお答え致します。
目次
ボジョレーヌーボーとは
ボジョレーヌーボーとはフランスのブルゴーニュ地方にあるボジョレーという地区で造られる、新しい(ヌーボー)お酒のことです。
ボジョレー地方は、「「花崗岩質」「石灰粘土層」の土壌で、ワイン用のブドウの栽培には非常に適している土地です。
ワインというと何年も寝かせると熟成されて美味しくなると思われていますが、ボジョレーヌーボーはその年に収穫されたブドウで造られた新酒で、熟成期間は6週間だけです。
ブドウの収穫のお祝いし、その年のブドウの出来を確かめる意味もあります。
世界中で解禁日に飲まれるのは、今年もいいブドウが採れたという自然の恵みに感謝するお祭り的な意味合いがあります。
「ボジョレーヌーボー」が初めて発売されたのは?
ときは1,800年代に遡り、デイリーワインとしてボージョレー周辺の地元住民が当時楽しんでいた、収穫直後のガメイ種から造られるフレッシュなワインがありました。
そんな「地酒」として地元で親しまれていた「ボジョレーヌーボー」は1967年フランス政府によって公式に11月15日を解禁日として発売することが認められたのをキッカケに、パリのレストランを中心に大ブームとなったのです。
その流れのなか、お酒の輸出が盛んになる1970~1980年代に入ると、日本を含め世界へと、その魅力が拡散していくことになったのです。
なんで11月の第三目木曜日が解禁日なの?
「ボジョレーヌーボー」の解禁日は毎年11月の第三木曜日と決まっています。
昔は12月15日と決められていましたが、ボジョレーヌーボーのみ解禁日を早めて欲しいという生産者協会の要請があったため、11月11日に変更されます。
その日はサン・マルタンという聖人の日でした。
当時聖人の日なんて、とても縁起が良いという話になり、この日に決定しました。
しかし、それから11月11日が無名戦士の日に変わってしまったため、11月11日に最も近いサン・タルベールの日である11月15日に解禁日が変更されました。
できるだけ早く出荷して、販売を伸ばそうとする生産者が増えたことで、品質の低いワインが出回る状態がうまれていたのですが、解禁日を決めることでそれを抑止したのです。
この日はワインの品質を落とさないために、ボジョレーが世界で注目を浴びたことで、ワイン業者や生産者が激しい競争を繰り広げるようになりました。
そして、さらに新たな問題が判明しました。
それは、解禁日を固定してしまうと、年によってはその日が日曜日になってしまうという問題です。
フランスでは、日曜日は殆どのワインショップ、レストランが休みなのです。
解禁日にお店が休みだと、売上が大きくマイナスになってしまうので、フランス政府が1984年に
「毎年11月の第3木曜日」を「ボジョレーヌーボー」の解禁日とすることを決めました。
「ボジョレーヌーボー」の醸造方法
ボジョレーヌーボーの醸造法は「マセラシオン・カルボニック」という方法を用いて造られています。
これを日本語にすると「炭酸ガス浸潤法」といいます。
普通のワインは、収穫したブドウを破砕してから発酵させますが、ボジョレーヌーボーの場合は、破砕せず縦型のステンレスタンクへと上からどんどん入れていきます。
そうすると、重みで下のブドウがつぶれて、果汁が流れ出ることによって発酵が始まります。
発酵が始まることによって炭酸ガスが生成されてタンクの中が炭酸ガスで充満していきます。
タンクの中はつぶれていないブドウの細胞内部での酵素のはたらきによってリンゴ酸が分解され、アルコール、アミノ酸、コハク酸などが生成され、ブドウの皮からも成分が浸出します
それによって次の特色が出ます。
・タンニンが少ないわりに色が濃く、渋みが通常のワインよりも少なくなる
・リンゴ酸の分解により、味わいがまろやかになる。
・炭酸ガスによって、酸化が防止されるのでフレッシュでライトな感じにできあがり、独特なバナナのような香りが漂う
・これらによって、新酒の状態でも充分飲めるワインになる
マセラシオン・カルボニック法は上記のように自然に発生する炭酸ガスを利用する方法と、炭酸ガスを外から注入する方法の2種類があります。
ボジョレーヌーボーは短時間で醸造を行わなければならないため、後者の炭酸ガス注入法を行っているとされていますが、一方でボジョレーの人々は前者の方法を行っていると言っています。
自分たちは時間をかけて美味しいワインを飲んでいるということでしょう。
ボジョレーヌーボーを飲んだけどイマイチだった
一口にボジョレーと言ってもメーカーの数だけ種類があります。
サントリーが正規代理店のジョルジュ・デュブッフは「ボジョレーの帝王」と呼ばれていて有名です。
その新酒であるボジョレーヌーボーは、その年に収穫されたブドウの出来を確認するための試飲酒の目的で造られいるのです。
前項でお話したとおり、炭酸ガスを注入する急速発酵技術を用いて数週間で醸造されるため、深味のない軽い風味の味になるのです。
ワインメーカーやブドウ農家がその年の収穫を祝ったり、販売業者がその年の購入量を決める目安にしたりというのが、ボジョレーヌーボーの本来の飲まれ方なのです。
その味がいまいちだったというのは、ある意味当然なのです。
目的がお祝いと試飲なわけですから。
日本はボジョレーヌーボー消費大国
日本でのワインの消費量はヨーロッパに比べて、非常に少ないのです。
日本---- 2㍑/年
ヨーロッパー20㍑/年
イタリアーー48㍑/年
にも関わらず、ボジョレーヌーボーの出荷量の多くを日本が輸入しています。
輸入量は世界第一位
全体生産量の1/4
普段殆どワインを飲まない人種がボジョレーヌーボーだけは、大量に飲んでいるということになります。
その理由の1つは、ボジョレーが日本に入ってきたのが1985年。
バブルの始まる年の前年です。
当時の人気では負けていた白ワインをボジョレーのお陰で逆転します。
お金があったので、新しいトレンドにみんなが乗るようになったのです。
更には日付変更線の関係上、本国フランスより早く解禁日を迎えることになるというのも、その人気がでた要因になっているのだと思います。
普段ワインを飲んでいる国の人々は、それほど美味しくもない試飲酒をそんなに飲む必要がないという認識に対し、日本ではその知識が浸透しておらず、だれも試飲酒なんて思って飲んでいないというのが大きな理由の一つでしょう。
もう一つの要因としては、バレンタインデーと一緒で販売側がボジョレーヌーボー解禁日をイベントとして大々的にに広告をしていて、まるでワインを飲む日みたいな位置づけにしているのに、消費者がまんまとのっけられてしまっているというのがその理由になっています。
ヨーロッパの人からしたら、普段ワインを飲まない日本人が、ボジョレーヌーボーだけを大量に飲んでいるのは、非常に滑稽に映るのではないかと思います。
しかも試飲酒「マセラシオン・カルボニック」法で短期間で大量に造る必要があるため、炭酸を強制注入する方法で作っているワインを飲んでいるわけです。
地元の人は、炭酸は自然発生させて造ったワインを飲んでいます。
ボジョレーヌーボーのキャッチコピー
ボジョレーヌーボーにはキャッチコピーというものがあります。
前項に話をした、ボジョレーヌーボーの、日本の輸入量が世界一だという話の要因になっているのは、このキャッピコピーだと言えます。
ボジョレーワイン委員会がそのキャッチコピーを出し、日本ではそれを各メーカーが独自アレンジしてコピーを出しているのです。
過去のキャッチコピーは下記になります。
年 | 内容 |
1995年 | 「ここ数年で一番出来が良い」 |
1996年 | 「10年に1度の逸品」 |
1997年 | 「まろやかで濃厚。近年まれにみるワインの出来で過去10年間でトップクラス」 |
1998年 | 「例年のようにおいしく、フレッシュな口当たり」 |
1999年 | 「1000年代最後の新酒ワインは近年にない出来」 |
2000年 | 「今世紀最後の新酒ワインは色鮮やか、甘みがある味」 |
2001年 | 「ここ10年で最もいい出来栄え」 |
2002年 | 「過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄えで1995年以来の出来」 |
2003年 | 「110年ぶりの当たり年」 |
2004年 | 「香りが強く中々の出来栄え」 |
2005年 | 「タフな03年とはまた違い、本来の軽さを備え、これぞ『ザ・ヌーボー』」 |
2006年 | 「今も語り継がれる76年や05年に近い出来」 |
2007年 | 「柔らかく果実味豊かで上質な味わい」 |
2008年 | 「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」 |
2009年 | 「過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来」 |
2010年 | 「2009年と同等の出来」 |
2011年 | 「100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え」 |
2012年 | 「偉大な繊細さと複雑な香りを持ち合わせ、心地よく、よく熟すことができて健全」 |
2013年 | 「みずみずしさが感じられる素晴らしい品質」 |
2014年 | 「エレガントで味わい深く、とてもバランスがよい」 |
2015年 | 「我がワイン人生最良のヌーヴォー」 |
2016年 | 「エレガントで酸味と果実味のバランスがとれた上品な味わい 」 |
ボジョレーヌーボーの条件
ボジョレーヌーボーの認定条件は?
ボジョレー地方で造られたワインだからといって、全部ボジョレーヌーボーとして認定されるわけではありません。
政府からの認定を通るためには
・赤ワインであること
・ボジョレー地区で醸造されていること
・その年に収穫したブドウで醸造していること
・ブドウの品種はガメイ酒で醸造していること
・マセラシオン・カルボニック法で醸造していること
・アルコール度数が9度以上であること
この六つを満たすことが「ボジョレーヌーボー」と認定される条件になります。
ボジョレーヌーボーの種類
ボジョレー・ヌーボーは、その地区によって四つの種類分類されます。
ボジョレー(地方)
ボジョレー・シュベリール(地区)
ボジョレー・ヴィラージュ(村)
クリュ・ボジョレー(畑の)
造られる範囲が狭くなると、それに従って規定が厳しくなるのと、取引単価が高くなります。
ボジョレーヌーボーの美味しい飲み方
ボジョレーヌーボーの美味しい飲み方をご紹介します。
まずは、早目に飲んでしまうということです。
ワインは寝かせると熟成されて美味しくなるというイメージがありますが、ボジョレーヌーボーはそうなりません。
「ボジョレーヌーボーは寝かせても美味くならない」ということを覚えておいてください。
◯保 存 ボトルを寝かせておく
―――――気温13〜15度
―――――湿度70〜80%
―――――※冷蔵庫は温度が低すぎて保存には向きません
◯温 度 飲む前に10℃~12℃に冷やす
―――――冷蔵庫に1時間程度入れておく
◯グラス 口の狭いグラスで飲む
―――――香りが弱いので、それを逃がさないため
◯賞味期限 2~3ヶ月
――――――時間が経つほど、味も香りも落ちていきます。
【飲み残しは?】
飲み残した場合は、小さめの瓶にうつして冷蔵庫で数日までなら保管できます。
または、フルーツやスパイスを加えてホットワインとして飲むと良いです。
世界から、笑われているかもしれませんが、ボジョレーヌーボーを一度くらいはためして見てはいかがでしょうか。
この辺の事情を頭におきながら飲むと、今までとは違う味わいがあるかもしれません。
日本はキルスト教徒ではない人が、クリスマスという行事を意味もわからずにやっちゃうのと同じノリで、ボジョレーヌーボーも愉しめばいいんだと思います。
普段ワインなんて飲まない方は、楽しみが増えるキッカケになるのではないでしょうか。
ボジョレーヌーボーに合う料理は
ボジョレーヌーボーは、癖のない軽くてフルーティーなワインなので、一般のワインに合わせる料理よりも軽めの料理が合います。
シーフードや脂の少ない肉、サラダ、さっぱり系のチーズが合います。
ボジョレーヌーボーに合う料理の例
❐きのことクリームチーズのパテ
クリームチーズのまろやかさがキノコの香りを引き立て、その風味がワインにぴったり合います
❐オイルサーディンのポテトサラダ
コクがあって、甘みがある味わいのポテトサラダは、ボジョレーヌーボーのおつまみにピッタリです。
❐ローストビーフ
ローストビーフのあっさりした食感はボジョレーヌーボーにはピッタリです。ワインにはお肉と言う方にはオススメです。
❐簡単ブイヤベース
ブイヤベースは、ボジョレーヌーボーによく合います。具材は好きな魚介類を入れて楽しみましょう。
❐鯛のお刺身、三枚おろし
さっぱりしたボジョレーヌーボーには、和食がよく合います。鯛などの白身魚のお刺身もおすすめ。もちろん、サーモンやブリなどの刺身もいいです。
❐鶏むね肉の柚子胡椒クリーム和え
さっぱりした鶏むね肉は、ボジョレーによく合います。
ボジョレーは白ワインに合う料理をイメージするとぴったりです。
ボジョレーヌーボーの歴代評価
画像→ボジョレーヌーボーとは_ボジョレーヌーボーの歴代評価
フランスボジョレーワイン委員会による歴代評価は次になります。
1995年:ここ数年で一番出来が良い
1996年:10年に1度の逸品
1997年:1976年以来の品質
1998年:10年に1度の当たり年
1999年:品質は昨年より良い
2000年:出来は上々で申し分の無い仕上がり
2001年:ここ10年で最高
2002年:過去10年で最高と言われた2001年を上回る出来栄え
2003年:100年に1度の出来
2004年:香りが強く中々の出来栄え
2005年:ここ数年で最高
2006年:昨年同様良い出来栄え
2007年:柔らかく果実味が豊かで上質な味わい
2008年:豊かな果実味と程よい酸味が調和した味
2009年:50年に1度の出来
2010年:1950年以降最高の出来といわれた2009年と同等の出来
2011年:近年の当たり年である2009年に匹敵する出来
2012年:史上最悪の不作だが、ブドウの品質はよく熟すことができて健全
2013年:繊細でしっかりとした骨格。みずみずしさが感じられる素晴らしい品質
2014年:「近年の当たり年である2009年と肩を並べるクオリティ
2015年:「我がワイン人生最良のヌーボー」
2016年:「エレガントで、魅惑的なワイン」
まとめ
毎年この季節になると、ボジョレーヌーボー解禁!と世間では騒いでいるけど、一体何なんだろうと思ってきたかたもおられるでしょう。
そして意味もわからず飲んで見たなんてこともあったのではないでしょうか。
銘柄がたくさんあるので、どれを飲んだらいいのか分からないと思います。
まずは、人気が高い「ジョルジュ デュブッフ ボジョレー ヌーボー」あたりをためしに飲んで見てはいかがでしょうか
値段も普通です。
ーーーーーーーージョルジュ デュブッフ ボジョレー ロゼ ヌーヴォー
料理は、基本あっさり目のものであれば大抵は合いますので、それほどメニューを選びません。
しかし、脂っこい料理には合わないです。
この機会にボジョレーヌーボーをためしてみてはいかがでしょうか。
料理は、基本あっさり目のものであれば大抵は合いますので、それほどメニューを選びません。
しかし、脂っこい料理には合わないです。
この機会にボジョレーヌーボーをためしてみてはいかがでしょうか。